第576話犬が犬に噛まれる、なんて壮大なショーだ

「何を言っているんだ? 俺を馬鹿だとでも思っているのか? ゾーイ、この段になってまだそんな支離滅裂なことを口にするのか。俺がお前なら、ここでくだらないことを並べ立てるより、素直に協力して全部白状する」

ナサニエルは嘲るような口調で言った。

そのときの彼は、ゾーイを見下ろすように高くそびえていた。

彼の顔をはっきり見るためには、首が痛くなるほど頭を反らさなければならなかった。

ナサニエルと知り合ってからこれまでのあいだ、彼のことを本当の意味でちゃんと見つめたのは、たぶんこれが初めてだった。

自分はナサニエルに恋をしていたのだと思っていた。だが、もしかすると最初からそうではなかったのかも...

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